2003年6月の手紙

山根 基世 様

 5月に報告しました求愛給餌をやったカワセミの番いは、それっきり結婚をしたでもなく、別れたでもなくまったく挨拶がありません。我家に来るカワセミの観察を始めて十年、番いはすべて名前をつけていたのに、今度の番いは、名前をつける間もなく疾風のように去って行ってしまいました。ただ非常に素晴しい求愛給餌のショットを撮らせてもらったので、まあ挨拶がなくても勘弁してやろうと思っております。

 そのカワセミ達と入れ替わりのようにヤマセミがやってきました。深山の渓谷に住み、滅多に見られないというのに、裏の池や表の庭のBSアンテナのコードに止まったりしたのです。最初に来た時はキュラッキュラッとかなり大きい声で鳴きながら飛んで来ました。どうも彼女を見つけに来たようでした。山奥に住んでいてガラスなんて知らなかったから、ガラスに映る己の姿を見て、彼女と思ったのでしょう。ガラスに体当たりをするので、ドシンと大きな音がして怪我をするのではないかと心配しましたが、クチバシからではなく、足から体当たりをするようでした。 以来、毎日来るようになり、ヤマクンと名付けました。

 ヤマクンは"ガラス戸"を学習しましてもう体当たりをしなくなると共にガラスに自分が映っているのを理解して、うっとりしていることもあります。何が気に入ったのか、我家に居ついてしまいました。考えられることは、家の周りに木が茂っていて池があり、よその住宅や道路とは離れていることが、安心の第一条件かも知れません。それに人の出入りもかなり少ないし、私達夫婦はカワセミにもヤマセミにも気を遣って目立つような事は決してしません。彼等の餌の生きた魚は、今では遠く埼玉から買ってくるのです。 ヤマセミが来るのは嬉しいですが、これが良い事なのかどうかは分かりません。

2003年6月
峯岸 信之